-サイド左近-


本当はずっと気付かないようにしていた。


俺は今の人間。


彼女は未来の人間。


永遠に結ばれていられるはずなんてないし、恐れ多いことだ。


しかし、それ以上に胸には愛しさが渦巻いている。


彼女を抱きしめたい。


俺だけの女にしたい。


一緒にいたい。


だから彼女にばかり甘い言葉をかけていた。


「なら、言います。友衣さん、俺はあんたが…」


気持ちを抑えることは出来なかった。


本当は心のどこかでずっと、言いたかった。


友衣さん。


しかし…。


「おい、左近。先ほど言い忘れていたのだが」


突如現れた殿に言葉を遮られる。


「殿」


「三成様」


彼女も慌てて居ずまいを正した。


「上杉家のことで話があるのだが」


「わかりました。今、行きます」


(今はまだ打ち明けるべき時ではない、か)


あらわにしかけた彼女への想いが心の奥でめらめらと燃え上がるのを感じながら、後ろ髪を引かれる思いで俺は友衣さんから離れ、殿の後について行った。