情炎の焔~危険な戦国軍師~

「…すみません」


帰り道、彼がぽつりと言う。


「あいつは昔の女です。もう6年も前になります」


「そんなことだろうと思ってました」


「すみません」


空と同じように左近様の横顔が沈んでいる。


そんな彼を元気づけるために私は明るく言った。


「でも嬉しかった」


「え?」


「左近様が本気で私をかばってくれたから」


そう言ってにっこり笑ってみせる。


「友衣さん」


「はい」


「俺は…」


その時だった。


ザアーッ


「わっ、雨」


突然大雨が降り出した。


辺りに建物はない。


町からも城からも離れている。


傘もない。


「とりあえず」


左近様が雑木林の方へ私の手を引いていく。


「ここならまだましでしょう」


木が生い茂っているので、確かにただ道に立っているよりは雨がしのげそうだ。


私は大木の根本にしゃがみ込んで言う。


「しかしひどい雨ですね」


「ええ」


「左近様、ごめんなさい」


「何がです?」


「私についてきてくれたばかりに」


「あんたのせいじゃありませんよ」


左近様はそう言って私の隣にしゃがんだ。


「くしゅんっ」