「堪忍して下さいね」


城を出て林の中を歩き始めると、いきなり左近様がそう言った。


「え?」


「殿のことですよ。まるでお守(も)りのために俺に行かせたように言ってましたが、本当はあんたを心配してるんです」


「そうですかねぇ」


バカだの何だの言われているせいか、いまひとつ実感がわかない。


「ええ。城下町に行くのは初めてでしょう?」


「はい」


「それに、前みたいに襲われでもしたら。殿はちゃんとそれを考えていらっしゃる」


前みたいに、というのはどうやら半蔵さんの一件のことを言っているようだ。


「何より、あんたにもしものことがあったら俺が耐えられない」


「はい?」


「いえ、なんでも」


あまりにボソッと発せられた言葉だったので聞き取れず、聞き返したが、もう教えてくれなかった。


そういえばこれ、デートだよね?


ね?


っていうかデートって強引に解釈するから。


「そっか。三成様ったらわざわざ気を利かせてデートの機会を設けてくれたのね」


「でえと?」


「あ、なんでもないです」


そんな会話をしつつ私達は山道を下りながら、城下町へと歩いていった。