「…」


彼女に手を振り払われた衝撃がまだ残っている。


本当は、去っていく背中を追いかけたかった。


だが。


「嫌いです。左近様なんて」


あの時の今にも泣き出しそうな顔。


もし追いかけたら彼女が壊れてしまうような気がした。


彼女は隠し事が下手だ。


無理して言っているのはわかっていた。


だが、友衣さんを壊したくない。


「ずーっと、私は左近様だけのものですよ」


そう言って優しく微笑んだ顔を見せてくれたのが、ずいぶんと昔のことに思える。


友衣さん、あんたは一体…。


「どうして…」


悔しくて、悲しい。


悲嘆に暮れていると、ふいに藤吾が現れた。