「バ、バカ。オレに限ってそのようなことはない」


とは言うものの、手元の扇がいつかと同じようにせわしなく開け閉めされている。


「変な顔をしていらっしゃいますよ」


「お、お前!」


恥ずかしさで真っ赤に染まった顔を見て、素直じゃないな、と思った。


本当は一侍女兼兵士がこんな軽口を叩いてはいけないのだろうが、ゲームや小説などでその名前や人物像を見てきたからだろうか、三成様にも左近様にもつい親しげに話してしまう。


彼らもそれはそれで嫌な顔はしない。


ありがたいが、考えてみればそれが私が悪ノリする原因なんだよなあ。


今さらそんなことに気付いて1人で苦笑していると、先程とは打って変わって神妙な声が耳に飛び込んできた。


「…お前も報われぬものだな」


「はい?」


その言葉の真意がつかめないので聞き返すが、本人はさっさと奥の間に入っていってしまった。


「変な三成様」


報われぬって?


私が不毛な恋をしているから?


そうだとしてもお前もってどういうこと?


まさか御正室のうた様とうまくいってないとか?


疑問符はずっと消えなかった。