「私…」
悲しみがドッと洪水のように溢れてきた。
耐えられなくて縁側に座り込む。
ダメなのかな。
私は、いや、私だけがこの時代の人間じゃない。
遥か過去の人間、しかも後世にまで広く名前を残している武将とこの先もずっと一緒にいたらいけないのかな。
こんなにすれ違ったことなんてなかった。
言い合ってもすぐにわかり合えた。
戦に行く行かないで揉めて悲しい夜を過ごした時でさえ、お互いに気持ちはわかっていた。
ただ受け入れないでぶつけ合ってしまっただけ。
でも今は左近様がわからない。
つらいことだって一緒に乗り越えてきたのに。
共に生きようって誓ったのに。
ー「あなたのようなよそ者は引っ込んでなさいよ」ー
りつさんの言葉に胸をえぐられる。
私は左近様の過去もあまり知らないし、この時代の人間でもない。
りつさんみたいに魅力的でもない。
「いかがした、友衣殿」
ふいに凛とした声が耳に響く。
「幸村様…」
「つらそうだな」
悲しげに私の隣に座る。
「わからないんです。私がここにいる意味が」
「何を言う。君は三成殿の遺志を継ぐ者。だから某と共に戦ってほしくて呼んだのだ。何も悩むことなどない」
確かに、大坂城に来た時はそんな使命感を抱いた。
だけど、自信がなくなってしまった。
志を同じくしていたはずの最愛の人は、隣にいない。
「そう、ですね」
本音が言えず、納得したふりをしてしまう。
「らしくないな」
いつのまにか藤吾さんが幸村様の後ろにいる。
「恋煩いですか?」
影月さんまでもが現れた。
「はい、まあ。でも、これは私の問題ですので、自分でなんとかします」
「しかし、そんなに悲しそうであるのに」
幸村様は不服そうだ。
「もしかして友衣って恋愛に慣れてない?」
「えっ」
藤吾さんの言葉に一瞬で固まる。
「なんといきなり失礼な」
まあ、間違ってはいないけど。
「ところで、本人とちゃんと話した?」
私の言葉を華麗にスルーした藤吾さん。
「え、私の状況を知ってるんですか?」
「実は見ちゃったんだよね。友衣があの人に話しかけた時に本人が気まずそうな顔をしててさ」
これはおそらく廊下で左近様をつかまえた時の話だろう。
確かにあのすぐ後に藤吾さんが来たし。
…あれ?
「藤吾さん。その場面を見ていたなら、どうしていい所で遮りに来たんですか」
中断されなければ左近様の話が聞けただろうに。
「単なる痴話喧嘩だと思ったから、ちょっとからかってやろうと思っていい所で邪魔しちゃった。でもまさかこんな深刻だなんて思わなかった。申し訳ない」
すまなそうにペコリと頭を下げられたから、もう許すしかなかった。
「まあ、要するに僕達が何か言うことは出来るけど、これは友衣達の問題。1回、自分の思うままにどーんとぶつかってみたら?」
ずいぶん強引に話をまとめられてしまったが、確かに左近様とちゃんと話をしていない。
砕ける覚悟で向き合わなきゃ。
いや、砕けてはいけないけど。
「わかりました」
私は首を縦に振る。
このまま終わりたくない。
今夜、左近様の部屋を訪ねてみよう。
そしてちゃんと話し合って心の中のもやもやをスッキリさせよう。
トラブルやりつさんに負けっ放しの私ではいけないんだから。
悲しみがドッと洪水のように溢れてきた。
耐えられなくて縁側に座り込む。
ダメなのかな。
私は、いや、私だけがこの時代の人間じゃない。
遥か過去の人間、しかも後世にまで広く名前を残している武将とこの先もずっと一緒にいたらいけないのかな。
こんなにすれ違ったことなんてなかった。
言い合ってもすぐにわかり合えた。
戦に行く行かないで揉めて悲しい夜を過ごした時でさえ、お互いに気持ちはわかっていた。
ただ受け入れないでぶつけ合ってしまっただけ。
でも今は左近様がわからない。
つらいことだって一緒に乗り越えてきたのに。
共に生きようって誓ったのに。
ー「あなたのようなよそ者は引っ込んでなさいよ」ー
りつさんの言葉に胸をえぐられる。
私は左近様の過去もあまり知らないし、この時代の人間でもない。
りつさんみたいに魅力的でもない。
「いかがした、友衣殿」
ふいに凛とした声が耳に響く。
「幸村様…」
「つらそうだな」
悲しげに私の隣に座る。
「わからないんです。私がここにいる意味が」
「何を言う。君は三成殿の遺志を継ぐ者。だから某と共に戦ってほしくて呼んだのだ。何も悩むことなどない」
確かに、大坂城に来た時はそんな使命感を抱いた。
だけど、自信がなくなってしまった。
志を同じくしていたはずの最愛の人は、隣にいない。
「そう、ですね」
本音が言えず、納得したふりをしてしまう。
「らしくないな」
いつのまにか藤吾さんが幸村様の後ろにいる。
「恋煩いですか?」
影月さんまでもが現れた。
「はい、まあ。でも、これは私の問題ですので、自分でなんとかします」
「しかし、そんなに悲しそうであるのに」
幸村様は不服そうだ。
「もしかして友衣って恋愛に慣れてない?」
「えっ」
藤吾さんの言葉に一瞬で固まる。
「なんといきなり失礼な」
まあ、間違ってはいないけど。
「ところで、本人とちゃんと話した?」
私の言葉を華麗にスルーした藤吾さん。
「え、私の状況を知ってるんですか?」
「実は見ちゃったんだよね。友衣があの人に話しかけた時に本人が気まずそうな顔をしててさ」
これはおそらく廊下で左近様をつかまえた時の話だろう。
確かにあのすぐ後に藤吾さんが来たし。
…あれ?
「藤吾さん。その場面を見ていたなら、どうしていい所で遮りに来たんですか」
中断されなければ左近様の話が聞けただろうに。
「単なる痴話喧嘩だと思ったから、ちょっとからかってやろうと思っていい所で邪魔しちゃった。でもまさかこんな深刻だなんて思わなかった。申し訳ない」
すまなそうにペコリと頭を下げられたから、もう許すしかなかった。
「まあ、要するに僕達が何か言うことは出来るけど、これは友衣達の問題。1回、自分の思うままにどーんとぶつかってみたら?」
ずいぶん強引に話をまとめられてしまったが、確かに左近様とちゃんと話をしていない。
砕ける覚悟で向き合わなきゃ。
いや、砕けてはいけないけど。
「わかりました」
私は首を縦に振る。
このまま終わりたくない。
今夜、左近様の部屋を訪ねてみよう。
そしてちゃんと話し合って心の中のもやもやをスッキリさせよう。
トラブルやりつさんに負けっ放しの私ではいけないんだから。