~Side左近~


影月という忍びに大坂城に連れて来られて、幸村に協力することになった俺は、ひとまずここに住むことになった。


友衣さんも無事だと聞いて安心した俺は、ひとまず城内をうろつく。


「ここもおよそ15年ぶりくらいか」


殿が佐和山城に蟄居させられる前はここにいた。


そして、細川ガラシャ殿の事件があった夜もここにいた。


「そういや、秀吉殿のお子である秀頼様にご挨拶してくるべきか。あとは15年ぶりに淀殿とも…」


淀殿とは、亡き豊臣秀吉殿の側室であり、秀頼様のご母堂様である。


そんなことを考えていたが、突然ふいに女の声がして現実に戻る。


それは少し物憂げな感じでありながら、妙に艶かしい。


「お久しぶりね、左近」


この声は…。