「間者にしてはバカで間が抜けている」


「まあ、せいぜい頑張ることだな。ほどほどに期待しておいてやる」


「気を抜くな。訓練を怠るな。この時世、いつ戦になってもおかしくないのだ」


「俺、あんたが好きです」


「もうあんたを離さない。今夜だけじゃなく、この先も」


「貴様はバカの分際でいちいち出しゃばる。目障りなのだよ」


「夜が明けたら戦いが始まるでしょう。もし俺が敵に討たれたら、たとえ俺を盾や踏み台にしてでも家康を討ち取って下さい」


「あんたも武士なんでしょう。それなら俺の意気、わかってくれますよね?」


「バカ言うな。お前まで死なせてたまるか!」


「たとえ自分が死のうとも、あんただけは生きてほしいと俺は願ってます」


この世界では考えもしなかった命の重さ。


海より深い愛。


それを戦乱に生きる彼らは教えてくれた。


400年後の現代においても大事な気持ちを。


まさか戦国時代にタイムスリップしてしまうなんて、ましてや憧れの武将と愛を交わすなんて普通はありえないことだけど。


でもこの奇跡のおかげで私は一回り大きく成長出来たような気がするの。


素直じゃないけど家臣思いの主に出会えたこと。


危険な戦国軍師に心の底から愛されたこと。


ずっと忘れない。