「わあ、雪だ」


それから1ヶ月以上経ったある日、私はお寺の外ではしゃいでいた。


昨夜、寝ている間に降り積もったらしい。


足首がすっかり埋まってしまって走りにくいが、一夜で出現した銀世界を目の当たりにしてテンションがぐんと上がる。


「はっはっは。雪がそんなに嬉しいですか」


左近様が笑いながらやって来る。


傷もだいぶ治ってきたらしく、この頃にはもう以前のように歩けるようになっていた。


「私が住んでいた場所はあまり雪が降らなかったものですから。えいっ」


ふいに私は彼に無造作につかんだ雪を投げつけた。


宙に放り出された雪が散らばり、太陽に照らされてキラキラとラメのように光る。


「あ、よくもやりましたね。そらっ」


笑顔で左近様も雪をぶつけてくる。


雪遊びなんて何年ぶりだろう。


年甲斐もなくはしゃぎ、動かしにくい足を無理に動かして雪を散らかす。


「あ」


調子に乗っていたからよろめいてしまった。


「危ないっ」


左近様に抱き抱えられるが、あまりに勢いがついてバランスを崩し、そのまま2人で雪にダイブしてしまう。


「すみません、左近様」


「大丈夫ですよ」


そうして顔を合わせた後、なんだかおかしくてバカみたいに笑い合った。


いつもの平和な光景だった。