2012年7月上旬


「あー､ダルい｡明日から研修なんてダルすぎっ」


私立北桜坂(ほくおうざか)女子大学の文学部日本文学科1年生の私､各務友衣(かがみ ゆい)は自室のベッドに転がりながらひとりぼやいていた｡


明日から面倒な学校の研修だ｡


大学の所有する寮へ行き､三泊四日の中でチームごとにワークなどを行う中で団体行動や意識を学ぶんだそうだ｡


この研修場所は二ヶ所あるのだが､友達がみんなもう片方の行き先になってしまったのだ｡


だから研修に行ったら友達は誰もいない｡


なんと凄絶につまらない予感のする研修だろう｡


「理奈ちゃんも夏紀ちゃんも架恋ちゃんも仙台の第2学寮なんだよね」


ちなみに私が行くのは佐渡の第1学寮｡


「だいたい大学生にもなってこんな小学生の宿泊学習的なものに参加しないと卒業出来ないなんて…」


私はにある､研修の用意が詰まったピンクのキャリーバッグの上に放り投げた「学寮研修のしおり～第1学寮での注意」と書かれた栞を憎々しげに見つめた｡


「もう｡こういう時は現実逃避に限るよね､うん」


1人で納得し､私は手元にあった携帯ゲーム機のスイッチを何気なく入れた｡