「私は未来から来たって言いましたよね?」


「ええ」


「だからあなた達の運命を知っていたんです。三成様は処刑され、左近様も関ヶ原の戦いで命を落とすって」


戦が始まる前は関ヶ原、とすら言えなかったのに終わった今になったらあっさり声が出る。


なんと皮肉な運命の神の仕業だろう。


「…」


左近様は何も言わない。


「だから2人を守りたくて佐和山城に置いてもらった。戦った。だけど三成様を助けられなかった。それどころか六条河原で刀を突き付けられた時、足がすくんで言葉も出なかった」


「…」


「三成様、以前言ってましたよね。「オレはなんと無力だろう」って。でも私の方がよっぽど無力でした」


「…」


「あの時、ひるまずに仲間だと言えていたら助けられたかもしれないのに。たとえ、それで私が代わりに殺されても…」


「ダメです、友衣さん!」


ふいに遮られて、私は驚いて目を見開く。


「殿がどんな気持ちで知らないふりしたか、わかってますか?あんたを守るためなんですよ!」


左近様らしくない、感情むき出しの声。


「三成様が私を守るためなんて。そんな。私、恩返し出来ないのに」


「いいえ」


そう言う彼の顔は優しくなっていた。


「出来ますよ。殿が最期まで守ったあんたのその命を精一杯輝かせる。それが殿の望みです」


「三成様の望み?」


「ええ。だから生きましょう。殿のためにも」


それを聞き、私の頭の中には今までの三成様の言葉が蘇っていた。