お寺の近くまで来ると、左近様が複雑な表情で縁側に座っていた。


「懐かしいわ。左近…」


女性は目を細めた。


「会って行かれますか?」


「いえ、いいわ。それじゃ私はここで」


「あの、あなたは?」


私が慌てて聞くと、彼女はフッと笑って言った。


「ただのしがない歴戦の女武者よ」


「あ、あの、ありがとうございました」


女性はくるりと背を向け、木立の中に姿を消した。


それを見届けた私は馬を連れてお寺に一歩一歩近付いていく。


すると左近様が目ざとく見つけて叫んだ。


「友衣さん!」