「う…」


気付くと朝になっていた。


隣を見ると、あるはずの友衣さんの姿は消えていた。


そっと布団の、彼女がいた辺りに触れるとまだほんのり温かい。


去ったばかりらしい。


いつもなら俺が起きてからしばらく一緒にいてくれるのに、今日は目が覚めるなりさっさと帰ってしまったようだ。


やはり昨日、俺がしたことを怒っているのだろうか。


自分の行為がひどく悔やまれる。


最も近くにいる大切な人を、俺は一時的な気持ちに任せてこの手で傷付けてしまったのだ。


彼女の表情が走馬灯のように駆け巡る。


「あっはっは。嘘です」


花火のようにパッと咲く笑顔。


「もうっ、左近様ったら」


からかわれて怒った顔。


「ごめんなさい、ごめんなさい…」


子供のように泣いた顔。


「やっ、可愛いだなんてっ」


生娘のように恥じらう顔。


そうやってくるくると変わる表情。


離れたくない。


もっと色々な顔を見ていたい。


「友衣さん…」


行き場のない想いが胸を支配していった。