「おっ」


彼の驚いたような声にハッとなる。


「あ、ごめんなさい。つい」


「いえ」


左近様はそう言って行灯に近寄り、雷の光を頼りに調べる。


「油が切れてしまったみたいですね」


そういうことか。


雷鳴とぴったりのタイミングで消えるものだからびっくりした。


ぎゅっ。


ふいに彼に腕を探られるように触られたと思うと手が繋がれる。


「あ」


考えてもいない行為に思わず声が出る。


「雷が怖いんでしょう?」


それは明らかにからかうような声だった。


「そんなことっ」


この期に及んでも強がる。


しかし、そんなものはこの軍師には通用しない。


「いやあ、昨夜はびっくりしましたよ。いきなり部屋を訪ねてくるから何かと思ったら、雷が怖いから一緒に寝てくれって言うんですから」


「もう!」


わざわざ言葉にするものだから恥ずかしさに顔が熱くなって、左近様を睨んだ。


障子越しに稲妻がチカチカして照らされた顔には、相変わらず余裕が溢れている。


悔しいけど、やっぱり素敵…。


ぼんやり見惚れていると、左近様が不思議そうな顔で聞いてきた。


「俺の顔に何か付いてますか?」


「いや、なんて大人の魅力溢れるいい男だろうと思ってね。見とれてました」


「そうですか。見つめすぎて穴を空けないで下さいね」


「わっ、いくら素敵でもちょっとは謙遜しましょうよ」


「ははは。戯れですよ。本当にあんたには冗談が通じませんね」


「知りませんでした?私は良くも悪くも単純な人間ですよ」


半分真面目、半分ふざけて言ってみた。


左近様はフッと笑って口を開く。


「まあ、だからからかい甲斐があるんですがね」


「あの、私で遊ぶのはやめて下さいね。おもちゃじゃないんですから」


すると彼は急に妖艶な笑みを浮かべた。