それから戦況は膠着状態が続いていた。


西軍も東軍もまったく動かない。


「まだ来ないのか」


三成様はだんだん焦れてきているようであった。


大坂に西軍の主力である毛利輝元様の部隊がいて、三成様は何度も遣いを出しているのだが、一向に腰を上げる気配がないのだという。


「いくら西軍の総帥でも、来るんだか来ないんだかわからない人達を待ってたらいつまでも始まりませんよ」


私はそんな三成様に焦れていた。


「いや、大坂の部隊が来なければ戦力的に不安定だ。それに大合戦になることは目に見えている。そんな大事な戦に総帥がいないとなるとまずいだろう」


戦力的に不安定と聞き、何も言葉が出なくなってしまう。


それなら仕方がないのかも。


戦力が不安定な状態で下手に戦うのはリスクが高いのではないか。


「困ったなあ」


窓から顔を出し、依然として動かない東軍を眺めながら呟く。


空もなんだかどんよりした灰色で、今にも一雨来そうだった。