翌日の夜、オレは城下にいる知り合いの元を訪ねた。


「久しいな」


「三成、あの家康に喧嘩を売ったって?」


「ああ」


「無謀なことをするものだな」


「だが、どうしても奴が許せなくてな」


「これでも使って気持ちを落ち着かせるがいい」


と、なぜか香をいくつもオレに寄越してくる。


その後もしばらくたわいのない世間話をしていたが、やがて彼がこう言った。


「そういえば昨日から客人を泊めているんだが、お前のことを知っているようなんだ」


「誰だ?」


すると彼はとある一室に連れていく。


「この部屋にいるからゆっくり話でもしてやってくれ」


そう言って去ってしまう。


変に思いながら障子を開けた。


そこには1人の少女が座っていた。


「華…!」


「三成様。お久しゅうございます」


あんな仕打ちをしたのに、彼女は相変わらず可憐な笑みを浮かべている。


「華。あのような仕打ちをしてすまなかった」


「いいえ」


「しかし、なぜここに?」


「さ迷っているところを助けて頂いたのです」


いじらしく笑っている。


「お前にまで迷惑をかけたな」


「いえ。そういうことはおっしゃらないで下さいませ。私は三成様と共にいられるだけで…」


その先は言われなくてもわかっていた。


抑制していた愛しさが溢れ出す。


言葉を遮るように小さい体を抱きしめた。


「今夜だけは、すべて忘れさせてくれるか?」


華が頷いたのを見てから、オレは目の前のニ回りは年下の女に溺れた…。





「もうそろそろ城に帰らねば」


気付くと暁だった。


「華。もし戦に勝てたら、また会いに来る」


「私は勝てると信じております」


華のその愛らしい声を聞くにつけても、ふいに思い出してしまう友衣の言葉。


「三成様、ふざけないで下さい。私は真面目に言ってるんですよ」


いつもボケッとしている友衣が最近、ずいぶん意見してくる。


なんだか焦っているみたいに。


あいつがあんなに必死になるのは一体…。