ある日、玄関の掃除をしていた私は来客を告げるためにバタバタと三成様の部屋に行った。


「三成様っ」


「なんだ。騒々しい」


「お客人です」


「誰だ」


「華さんです」


「何?」


三成様の表情が驚きの色に変わる。


侍女であり、三成様の愛を受けている華さんは佐和山城にいるはずだった。


それなのに、お供をたった1人しか連れずにわざわざここまで歩いて来るとは、よほど三成様が恋しくなったのだろうか。


しかし、三成様は眉根に皺を寄せている。


「三成様?」


「主が戦中に女を直々に招き入れるなど聞いたことがない」


「でも三成様に会いたくて来たはずですから、一目でも会ったらどうです」


「お前の意見など求めていない」


ぴしゃりと言われて、私はすごすごと華さんの元へ三成様の意思を伝えに行った。