「ん…」


目を開くと、知らない場所だった。


板張りの見知らぬ部屋。


ふと横を見るとやはり見知らぬ、なんだかむさ苦しい感じの中年の男性と目が合う。


まさかこの人が、賊が言ってたお館?


「!」


嫌な予感がした私は慌てて起き上がり、逃げようとした。


しかしそれより早く腕をつかまれ、寝転がされる。


「は、離してっ」


「ほう、子分どもは強気だと言っていたが、いい声で啼(な)く」


湿った視線を浴びせかけられ、寒気が走った。


男達が寄ってきた時よりも恐怖を感じ、思わず涙がこぼれる。


しかし、無情にも目の前の人は私の肩から着物を落とそうとする。


「嫌っ」


どんなに暴れても男は離れてくれない。


「左近様、左近様ぁっ」


私は夢中で愛しい人の名前を泣き叫んだ。


その時。


ガンッ!


「があっ」


目の前の男が横へ倒れる。


現れた人物の意外さに私は目を見開いた。


「半蔵さん…!」