「金はない」


あくまでも三成様を追いかけるのが目的なので、私の言葉に偽りはない。


「ほう」


男の1人が私の顔を見た。


「見ろ。侍のような格好をしているが女だ」


「しかも良さそうな服だな。いい所の娘か?」


「ならばなぜ1人でこんな夜道に?」


「貴様らには関係ない」


あえてキャラを変えて強気に振る舞う。


「まあ、面白そうではある。お館に献上しよう」


「!」


とっさに危険を感じた私は籠手(こて)で1人を殴りつけた。


「この女っ」


襲いかかってくる男達も次々に殴る。


「各務をなめるな」


そう言い捨て、疾風の元に駆け寄ろうとした時…。


(あっ)


倒れていた男のうちの1人に足首をつかまれ、バランスを崩した。


あっという間に地面に叩きつけられる。


その隙に誰かに腕を封じられ、誰かに口をふさがれた。


「ううっ」


苦しい。


身動きが取れない。


(三成様、左近様。ごめんなさい…)


薄れゆく意識の中、私はそれだけを考えた。