ーサイド友衣ー


それから数日後、恐れていたことが起きた。


「申し上げます!竹ケ鼻城が敵の手に落ちた模様。さらに、犬山城の者達が東軍に寝返りました!」


伝令の者の声が辺りに響き渡った。


「何!?」


三成様の表情が変わる。


「そんな…」


この近辺には竹ケ鼻、犬山、岐阜の3つの西軍の要塞となっている城がある。


このうち2つが敵のものとなったらしい。


こうなってくれば敵がここに来るのも時間の問題だろう。


しかし、やはり兵力は分散したままでこの大垣城には数千の兵しかいない。


今から呼び戻すにしても時間がかかる。


「島津義弘殿を墨俣に呼べ。それから防衛のために沢渡に陣を敷く」


三成様が伝令の者にそう言うのを聞いて、私は慌てて駆け寄った。


「敵は岐阜から来るんじゃないでしょうか」


これもあの歴史小説に書いてあった。


「何を妙なことを言う。岐阜は北だぞ。来るとしたら沢渡だろう」


あくまで小説で読んだだけで、岐阜と沢渡の地理的な条件がわからない私はそれ以上言えなかった。


「私のバカッ…」


人生でこれほどまでに己の知識不足を悔いたことはない。


そしてこの後、戦況はますます西軍に不利に動いていくのである。