「♪愛しさ溢れて止められない。この想い止まらない!君が好きだよ~」


私はまたJ-POP、しかも人気アイドルグループの歌を歌っていた。


これから城を出るのだが、緊張でガチガチなので、心をほぐすために底抜けに明るい歌を口ずさんでいるのだ。


「♪ドキドキするの君を見ると。どんどん募るのは恋心。いつだってI love you!!イエー」


「何をわけのわからない歌を歌っている」


いつかと同じようにまた三成様に遮られた。


「あ、三成様」


「これから出るというのにずいぶんのんきなのだな」


「そうですよね。こんな明るい歌じゃ気が抜けますよね。じゃあ大和魂が揺さぶられるような歌にします」


「そういう問題ではない」


その言葉を聞かなかったふりして私は歌い出した。


「♪我は行く、未来の彼方へと~。胸に誓った義と絆を携えて、不義をくじくため~」


ちなみにこれは飛燕の如く舞えのキャラクターソングである。


この歌は石田三成バージョンだ。


「♪乱世の火種、消さねばならぬ。かの人が作り上げし世を守りたい~」


三成様は腕組みして黙って聞いている。


「♪今、絆を信じ、大一大万大吉の文字を天に掲げ~、駆ける。目の前に立ちはだかるのは強敵か霧か。それでも目指す。泰平の世」


すると三成様の表情が変わった。


「お前…」


「なんですか?」


「まさかオレのためにそのような歌を?」


「あ、それは…」


すると突然、左近様の声が飛んできた。


「へえ。歌で殿を元気づけるなんて友衣さんもやるじゃないですか」


「いえいえ。そういうわけでは」


否定するが、どうやら謙遜していると思われたらしく左近様は明るく笑っている。


半ばやけくそになった私は唐突に島左近バージョンを歌う。


「♪行くぜ、島左近。この槍に思いを込めて。絶対に負けられない戦いがそこにある~」


おっ、という顔をして三成様と左近様が歌う私を見ている。


「♪命懸けて守りたい人がいる。燃えろ!闘志。燃えろ!大和魂。飛燕の如く舞い、戦場を駆ける~」


さらに歌い続けた。


「♪吠えろ!明日に向かって。吠えろ!未来に向かって。さあ、いざ出陣。すべては主のために~」


そこまで歌うと三成様はうっすら微笑し、左近様は楽しげに手を叩いていた。


私のみならず、2人の気分もほぐれたようで「良かった」と思った。