それから三成様は吉継様に会う他にも、奉行である増田長盛様、長束正家様への指示を送り、作戦を練っていた。


大坂を西軍が押さえた以上、大坂屋敷にいるであろう徳川派の将達の妻子を人質に出来る、だの何だの言っている。


なんとなくその妻子達を自分に置き換えて考えてみると、なんだかとても残酷な気がした。


それを、来客のない間に三成様に言うと


「甘い」


と睨まれた。


「貴様は戦というものがわかってない。そうやって、ただ単にかわいそうだからという理由で敵に隙を見せてみろ。そこにつけ込まれて真っ先に殺される」


「う…」


いつもお前って言うのに、今日は貴様になってるし。


「情けは戦には無用なのだよ」


「ですよね…」


「ふっ。まったくバカの考えることはわからん」


三成様は呆れ果てているようである。


「すいませんでした」


しょげ返ってしまった私をちらりと見て彼は言った。


「こうして厳しく言えばわかってくれるだろう?」


「え?」


「いや、勘違いするな。だからといって別に貴様のことを心配しているからではない」


聞き返しただけなのに、なぜか焦る三成様。


「ただ、貴様のような突拍子もないことを言う奴がいなくなったら、暇潰し出来なくなるからな」


手元の扇はまたもや開け閉めされている。


あれ?


もしかして心配してくれている?


「ありがとうございます」


そう言って、さらに焦る三成様に背を向け、部屋を辞した。