航━わたる。主人公。
龍━りゅう。航が好きな君の恋人。



「あ、航。龍どこにいるか知らない?」

「龍ならあっちの部屋にいると思うよ。」

「そっか、ありがとっ!」


そう言って駆け出す君。

その背中が愛しくて

君の笑顔が愛しくて

だけど叶わない。

君にはもう、相手がいる。

その人は今の俺なんかじゃ

到底適わないくらい

立派な人だ。

信頼できる人だから

何も言わず、この淡い気持ちを

一人静かに胸の奥に仕舞い込む。

彼といることで、もし

君が涙を流すなら

君が苦しむのなら

俺は正々堂々、正面から

君を奪ってあげる。



だけど君はいつも笑ってる。

だから俺は誰にも察せられないように

隠して、君に笑いかけるんだ。

俺はちゃんと笑えてる?
声が上ずったり、震えたりしてない?

わからないけど


俺は毎日君の笑顔を見つけよう。

そして、今日もいい日だと
笑って空を見上げよう。

この想いが風に乗って

君の心に届くことを

切実に……ただ切実に……

祈って………