とうとう来てまった...テストの日が
「あっちゃん、学校行くで!」
「うんー」
ウチは姉貴にそう言われると
机の上に置いてあるシャーペンを握った
昨日、久米先生からもらったシャーペン...
ガチャッ
「行ってきます」
ウチは誰もおらん家にそう言って
彩ちゃんと手ぇつないでる姉貴を追っかけた
ウチらは一旦彩ちゃんを小学校まで送って
2人で中学校に行くことにした
「姉ちゃん、あっちゃん、行ってきます!!」
「行ってらっしゃい!」
姉貴はずっと黙って笑っている
彩ちゃんは元気に走っていった
「あっちゃん、行こか」
「あ、うん」
姉貴は昨日から必要最低限の事しか話さなくなった
「じゃぁあっちゃん、ねぇちゃん職員室寄ってから行くから」
「あ、うん」
解ってる
姉貴が職員室に行く理由は...
引越しのことや、その後のこととか
先生に言いに行くって
解ってる...
でも、職員室に行く姉貴の姿が
妙に寂しそうに見えて、
泣きそうになった
きっと、一番辛いんは、姉貴やねんな...
「おい、中岡!!」
ウチが振り向くと、部活の顧問がいた
「先生、なんですか?」
「お前、引っ越すねんな」
「...はい」
先生は険しい顔をして
ウチの顔を見た
「向こうでもバレー続けるんか?」
「...できればですけど続けたいとは思ってます」
「そん時は、練習試合しような」
先生は笑ってた
ケド、目尻にはうっすらと涙が浮かんでた
鬼の目にも涙ってこーゆーコトやねんな...
ウチは笑って先生にお礼を言って
教室へと上がった
「飛鳥おはよー」
いつもどおり愛菜、由樹が声をかけてきた
「おー!!オッハー!!!」
なるべくバレへんように
いつものテンションで2人に接した
「相変わらず飛鳥はハイテンションやなぁー!!」
愛菜が笑ってウチの肩を
バシバシ叩いた
「痛いゎー!!」
ウチが叩き返すと
愛菜が大げさな反応をして
「肩壊れたぁー!!」とか言いよる
「ハハハッ!!...やっぱ楽しぃや...」
「...飛鳥?どした?」
ヤバイ、涙出てきそう...
「ウチトイレ!!」
「あ、飛鳥!?」
ポタッ...
皆と会うとこんな悲しくなるなんて
知らんかった
卒業まで同じチームで...友達で...
いれるって思ってた
「おぃ飛鳥、お前が泣くやなんてらしくないやんか」
「っ...慧ちゃん...」
慧ちゃんには話してもえぇかな...
「...こっち来ぃ」
「えっ、ちょっと慧ちゃん!?」
慧ちゃんはウチの手を引いて
階段をどんどんどんどん上がってく
そんで、屋上のドアを開けて
ウチを座らせた
「ここで待っとけ」
「はっ?!えっ、慧ちゃんどこ行くん?!」
慧ちゃんはウチを置いて
屋上から出てった
「なんやねんこんなとこ置いてって...慧ちゃんのアホ...」
そんで数分後
慧ちゃんが息を切らして帰ってきた
「はぁ、はぁっ...おらっ!!」
慧ちゃんは手に持っていた
ナイロン袋をウチに押し付けてきた
「な、何これ?」
「なか見てみぃ」
ウチはちょっと不審そうに
中を見た
「あっ!!これ...」
そこには昔っから
慧ちゃんとしか食べたことない
ソーダのダブルアイス
2人で割って食べんねん
「慧ちゃん...今そーゆー感じちゃぅやろ...」
「飛鳥これ食ったら何でもゆーやん」
そう言って慧ちゃんは
二カッと白い歯を見せて
無邪気に笑った
そんで、ウチの隣に腰を下ろして
アイスを半分割ってとった
慧ちゃんんはかなわんなぁ…
「お前さぁ、引っ越すんやろ?」
「えっ、なんで知っとん?!」
ウチは驚きすぎて
慧ちゃんの顔を覗き込んだ
慧ちゃんはさっきの笑顔とは裏腹に
悲しそうに笑った
「母さんから聞いたよ、全部...
お前の母さんから電話がかかってきてん」
「えっ...母さんが?」

