ピピピピッピピピピッ

携帯のアラームがウチをたたき起こそうとする
何か、悪い夢でも見たような感覚やなぁ
ウチは部活で筋肉痛の足をさすりながら階段を下りた

「おはよぉ~」

「おはよぉあっちゃん」

ウチはその光景を見て
すぐに現実へと引き戻された

部屋は昨日の荒らされたままの状態、
いつも居るはずの母さんと父さんのいない光景...

「...姉貴、彩ちゃんは?」

「寝てる...」

「起こしてくるわ...」

現実から目を背け様とするウチを
姉貴が止めた

「あっちゃん、ちょっとこっち来てくれへん?」

「...何?」

「こっち座って」

姉貴はウチを自分の向かい側に座らせた
そんで真剣な目でウチの目を見て話し始めた

「あっちゃん、今な、父さんは浮気相手の人と遠くへ行ってしもたんや...そんでな、母さんが、1人で消えてしまったんや...」

「? つまりウチらはほんまもんの...親無し?」

ウチはこんな事
自分の口から出るなんて思わんかった
こんなんドラマや漫画だけの世界やと思っとった
けど、そんな事が今、
ウチの目の前に叩きつけられている...
現実となってんねんな...

「そんでな、来週から...淡路のばあちゃん家に行こうと思うとんや」

姉貴がためらいながらも放った
一言だった...

「つまり、大阪を離れるってこと?」

「せや」

待って、ここを離れたら
学校は?部活は?後...塾は?
ウチは姉貴に全てを訴えるような目で見た

「わかってる...わかってるよあっちゃん...今の生活のことやろ?」

ウチは黙って頷いた

「しょうがないんよ...全部やめよ...」

ウチはこみ上げるものが
抑えきれんかった
気づいた時には、昨日の姉貴みたいに
怒鳴ってた

「そんなん嫌や!!!何でウチの人生親の離婚なんかで狂わされなアカンねん!!!
ふざけんな!!ウチはここに居たいねん!!!」

「何で?」

姉貴は戸惑ったようにウチの事を見てる
ウチの顔は、あふれでる想いが止まらず既に
グッチャグチャになっている

「姉貴かて知ってるやろ!?」

「...」

姉貴は黙ってうつむいた

「ウチが何で行きたないかなんて、よぉわかってるんちゃうの!?」

「あっちゃん...」

淡路のばあちゃんは、母方のお母さんにあたるねんけどな、ウチの父さんのこと
ごっつ嫌ってんねん
ウチが父さん似やからか知らんけど、
ウチ、ばあちゃんに嫌われてんねん...
何でかわからんけど、昔「ばあちゃん」って呼んだら、ひっぱたかれてん...

「ウチは行かへんからっ!!!」

ウチは姉貴にそう叫んで
寝巻きのまま、寝癖も付いたまま、
玄関のドアを勢いよく開けて飛び出していった

「あっちゃん!!」

姉貴の呼ぶ声なんて気にも止めず、
ひたすら走った

「皆、皆...大っ嫌いだ...」