本当に一瞬だったから自分でもよく分からないんだけど。あの時、私が掴んだ腕をアツがとっさに振り払ったんだ。
目にガツンと衝撃があって反射的に押さえた。
多分、時計が当たっちゃったのかな?
ジーンと熱くなって、押さえていた手を離したら、ツーって生暖かいものが流れ落ちた。
手が赤く染まっているのを見て、あ・・・血が出てるって気がついた時には、私よりアツの顔から血の気が引いていて。
何度も“ごめん”って謝りながら、私を一番近くの病院に連れて行ってくれた。
血がたくさん出てたから驚いちゃったけど、目尻を3ハリ縫うくらいの小さい傷。
痛みだってそんなになかったし、こんなのなんともないじゃん。
でもアツにとってはそうじゃないみたいで・・・
すごく辛そうに笑うアツを玄関で見送ると、居てもたっても居られない気持ちに襲われた。
「お父さん、ちょっとアツと話してくる!」
そう叫んで家を飛び出した。
「アツっ待って!!」
振り向いたアツは、またムリに笑顔を作る。
「どうしたんだよ?シャワーでも浴びて早く寝ろよ?今日は疲れただろ?」
ゆっくり近づいてアツの指に軽く自分の指を絡める。
「今日まだキスしてないよ?そのまま帰っちゃうつもりだったでしょ?」
「コナミ・・・・・・ごめんな?・・・ごめん」
私の前髪を指で流し、右目のガーゼを見て、また辛そうな顔をする。
「もうアツ!そんな顔しな〜いのっ!ね?大丈夫だから、気にしないで?」
うんと頷くアツはやっぱり元気がなくて。どうしたら元気になってくれるかな?って考えても、今の状況じゃ何にも思い浮かばない。
.


