少し影の出来た大きな木の下にシートを広げて、さっそくだけどお弁当タイム。
大きな入れ物にぎっしりとおかずを詰め込んだお弁当を真ん中にでーんと置いて、お絞りとお箸を無言で渡した私から、アツは少し気まずそうに受け取る。
「食っていいの?」
「どうぞ?」
あまりアツを見ないまま答える私のこの態度は、どう考えてもかわいくない。
せっかく二人で過ごす休日で、天気も良くて、たくさんの自然に囲まれたのどかな場所に来てるのに、あんなつまんない事をいつまでも気にしている自分が、すっごくちっぽけに思えてくる。
素直になろう・・・そう思ってアツを見ると、たくさんあるおかずかの中から真っ先に卵焼きを選んで口に運ぶ。
「うん、やっぱうめぇ」
嬉しそうに笑ってまた卵焼きに手を伸ばすアツを見ていると、さっきまでモヤモヤしていた気持ちが嘘の様に晴れ渡って行く。
「おにぎりもあるよ〜!アツの好きな梅干しと〜おかか!!」
口いっぱいにほうばって、私の頭を撫でてくれるアツはすっかりご機嫌で、
「アツ、さっきごめんね?」
そう言った私に卵焼きを食べさせてくれた。
「うまいだろ?」
「うん!」
作りすぎたはずのお弁当を、アツは残さずきれいに食べてくれた。
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