「コナミ?」



聞き慣れた声に視線を向けると、ネクタイを緩めて少し疲れた顔をしたアツがいた。



「アツ!何で?だってこの駅、アツの会社の駅じゃないよね?」



「明日のイベントの準備」



アツの視線はすぐに隣の村井くんに移る。



「あっあの・・・」



「同期の村井です。今日飲み会あって。もしかして彼氏さんですか?」



私が紹介する前に、村井くんが立ち上がってアツに名刺を渡す。



「コナミがお世話になっています。倉橋です」



ネクタイを直し、ペコッと頭を下げて、内ポケットから取り出した名刺をアツが村井くんに差し出す。



慣れた仕草の名刺交換に私は少しキュンとした。



だって私、名刺は作ってもらったけど、まだ1度も誰かに渡した事なんてないんだもんっ!



それに昔のアツなら今のこの状況を見たら、間違いなく不機嫌を顔に出して私を睨みつけてたよ・・・



うっすら笑顔を浮かべて村井くんと話すアツを見て、大人になったなぁ〜と感心・・・したのも束の間。



村井くんが先に電車を降りると、いきなり黙り込んで不機嫌オーラを出しまくり。



「アツ、遅くまで大変だったね?お疲れ様!!」



「ホントお疲れだよ。お前、何で男と二人でいたんだよ?」



何でって聞かれても、今日飲み会があるのは伝えてあったし、それを許可したのはアツだし、同じ方向なら同じ電車に乗るのは当たり前だし・・・



アツは私のどんな答えが聞きたくてそんな質問するの?




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