誰かが近づいてくる足音が聞こえて、おばちゃんとふたり、慌てて涙を拭いた。



「コナミ、冷たいお茶入れて?」



ヤバイ!!



今、顔を見られたら泣いていたことがバレちゃう。



「ダメだよ!私のお家じゃないもん、勝手に冷蔵庫あけられない!アツ、自分でやってよ〜」



振り向かないまま、出来るだけ明るい声でそう言ったのに、アツはすぐに気付いてしまうんだ。



「どした?なん泣いてんの?」



顔を見ないまま、後ろから私の頭に手を置いたアツ。



その声がすごく優しかったから・・・さっき聞いたばかりの話を思い出してまた涙が溢れた。



「コナミちゃん、さっきのお願いOKだからね!」



おばちゃんはそう言うと、私とアツを残してキッチンから出て行った。



「コナミ?」



初めて来たお家。



彼氏の実家。



すぐ近くのリビングにはアツの両親がいる。



ダメだって分かってるけど・・・我慢できない。



クルリと体の向きを変えて、目の前にあるアツの胸に顔をうずめ、腕を腰に回してギュッと力を込めた。



「・・・大好き」



背中に回ったアツの腕が優しく私を包み込んでくれる。



「はは、知ってるし。マジどうした?さっそく母さんにいじめられた?」



「ち、違うよ!!」



見上げたアツの顔が穏やかに微笑んでいたから、ほんとはそんなこと思ってないんだって安心した。



「おばちゃんがね、アツのこと私にくれるって。もうアツは私のなんだからね?」



「そんなん・・・とっくに」



少し腰をかがめたアツが私のオデコに自分のオデコをくっつけた。



数センチの距離がもどかしい。



「キスしたい?」



小さな声で囁くアツの唇。



「・・・うん」



「お前・・・大胆なヤツだなぁ〜」



目を閉じるとすぐにアツの唇が重なった。



大胆なのはどっちよっ!?



私はね、チュッってしてくれるだけで満足だったんだよ?



それなのに・・・息もさせてもらえないくらいの深いキス。



いくら胸を押しても顔を背けようとしても、アツはやめてはくれなかった。




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