別れた理由を何度聞いてもアツは答えなかった。



ただ自分が悪いからだとしか。



「若いふたりだから、少しのすれ違いで別れてしまうことも仕方ないって思ったの。だけど篤貴を見てるとね、別れたことより、コナミちゃんを傷つけてしまったことを悔いているような気がして・・・」



別れている間、私はずっと自分ばかりが苦しいと思っていた。



アツがどんな風に過ごしているかなんて考えてあげられなかった。



アツもたくさんの眠れない夜をすごしていたはず。



もしかしたら、ひとりで泣いていた日もあったかもしれない。



あの時はほんとに何にも見えてなくて、ただ傷ついた心が痛すぎて、泣くことと強がることしかできなかった。



「ボロボロだって思った。もう神戸に連れて帰ろうって・・・」



「・・・っ・・・・・・ごめんなさいっ」



改めて知った。



おばちゃんにそう思わせてしまう程に、私はアツを傷つけてしまっていたんだ。



「だけどね、できなかったの。篤貴が、卒業するまではコナミちゃんの近くにいたいって・・・泣くから・・・」



キッチンでふたり、もう涙を隠す事も出来ないくらいに泣いていた。



「・・・おばちゃん」



「コナミちゃんありがとね?篤貴がなにをしたのかは、おばちゃんには分からないけど・・・篤貴を許してくれて、ありがとう」



なんにも答えられなくて、ただ首を横に振っておばちゃんの目を見つめた。



「篤貴があれだけ苦しんだってことは、コナミちゃんはもっと苦しかったよね?」



優しい声。



お母さんの温かさ。



抱きしめられた胸の中で、せめてリビングにいるアツには気付かれないように声を殺して泣いた。




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