「千沙ってばー!」
一向に応じないわたしにしびれを切らしたのか、徹が再び

時折混ざる鼻をすする音に揺らぎつつわたしは強い口調で言い放った。
「もううるさい!わたしはあんたと違ってほぼ毎日働いてるの!たまの休みくらい寝かせなさい」
「千沙ぁ~」
・・・今、[しゅん]って効果音が聞こえたような。
ここで振り返っちゃいけない、ここで振り返っちゃいけない。振り返ったらこの前の二の舞に・・・。
「ああもう!わかったから泣くな!」
振り返ってしまった。そして抱きしめてしまった。
こんなやつのどこに惚れたんだろう。今年でハタチの男だというのに、泣き虫で女々しい。小さな虫すら素手で叩けない情けなさ。まるで年下。
「一緒に・・・いってくれるの?」
徹がわたしの胸に顔をうずめながら言う。
「うん、行こうか」