今が常に最高に幸せでいられるのなら、それはどんなに楽しいだろう。
でも、世の中そんなに甘くはなくて「あの頃に戻りたい」とか「もう一度やり直したい」とか、思ってる人ばかり。んで、それが現実だったりする。
かく言うわたしも、若干18にして何度後悔をしてきたことかしれない。
ほんの小さな出来事から、今のわたしをつくるきっかけとなったであろう大きな選択まで。
年端をそんなに重ねているわけじゃないから、こんなふうに言っちゃうと大人からしたら馬鹿馬鹿しいのかもしれないけど、私たち子供からすると小さな背丈で探る小さな世界はとてつもなく大きくて、それで、ーって、ああもう!何が言いたいのかこんがらがってきちゃったよ。要するに子供にも、割と深刻な後悔があったりするのです。わたしの場合それは、罪悪感を伴うもので。
「ねえ千沙、どっか行こうよ」
ぼうっと寝転んでいたわたしの手から、ページの進む様子がない雑誌をひったくると彼ー北茂徹(きたしげ とおる)は口をとがらせて言った。
持つものがなくなったわたしは、却下とだけ呟くと、ソファーの背もたれ側に顔を向ける。徹の文句が聞こえてくるけど、無視。
今日は久しぶりに、徹の大学とわたしの仕事の休みが合ったものだから、彼は出かけたくて仕方ないよう。
なんせ数日前からパソコンや雑誌をうきうきしながら熱心に覗き込んでいたから、デートスポットなんかも調査済みなんだと思う。