「先生、あなたはですね、私の夫です」


「へ?」


間抜けな声を出す先生。


「申し遅れました。私、水橋流星…じゃなかった。青山流星と申します。23歳です。こちらは母の水橋睡蓮です。ちなみに44歳」


「はぁ」


「ねぇ。さっき、ちょっと単刀直入に言い過ぎだったんじゃないの?」


母がまた苦笑している。


「あ、そうか。ええと、あなたは私の恩師であり、元義理の父親であり、夫です」


「???」


ますますわからないという顔をされてしまった。


よし、こうなったら物語みたいに語ってやる。


「昔むかし…じゃなくて6年前、あるところに17歳の水橋流星という女子高生がいました。彼女は25歳年上の生物教師、青山皐示先生に恋をしていたのです」


「…」


「流星はクリスマスイブ、課外が終わってから青山先生に告白をしました。しかし、断られてしまいます。なんと青山先生は流星の母親、水橋睡蓮さんと婚約していたのです」


「…」


「それでも流星は青山先生への思いを抱えながら生きます。高校を卒業し、大学生になっても思いは変わりませんでした。そして大学3年生の春休み、久々に実家に帰りました。そこで母、睡蓮から離婚したことを聞きます」


「…」


「流星は慌てて学校に行きました。そこで青山先生に会い、思いをぶつけます。そうして2人は付き合うことになりました」


「…」


「そして今日、晴れて流星と青山先生はめでたく結婚なのですが、青山先生が階段の下で倒れていたのでした」


さあ、どうだとばかりに私は先生を見る。


少しの沈黙の後、先生が口を開いた。