-病院-


私は赤いランプをしばらく見つめていたが、やがて視線を落とした。


視界にあるのは汚れなき真っ白な床だけだ。


どうして?


どうしてこんなことになるの?


やっと幸せをつかんだと思ったのに。


無論、先生を責めるつもりは微塵もない。


だけどもしこれが運命だとしたら…。


神様、ひどいよ。


母は私の隣でつらそうに目を伏せていた。


こんな時なのに先生との思い出が頭の中によみがえる。


その思い出の中の先生はどんな時も笑っていて、いかにも幸せ。


私の頭の中の思い出なんて箱庭のように小さい。


だけどそれは小さいながらも尊く、どんなものも代わりには出来ないかけがえのないものなのだ。


誰にも邪魔されたくない。


失いたくない。


私の頭の中のまるで小さな宝石箱のような世界を。


そして、先生の笑顔を。


「私、ずっと先生について行動していれば良かった。それなら先生を助けられたかもしれないのに」


「流星…」


母は私を不安げに見る。


「私、先生と一緒なら何が起きても怯まない。そう思っていた」


実際、先生に何か忌まわしい過去があるとわかった時も、先生といられるならどんな目にあっても構わないと思った。


別の時は先生の支えになりたいとも考えた。


「なのに私は!先生に助けてもらってばかりだった!」


クリスマスイブの告白の夜に私を必死に探しに来てくれたのも、謎の集団の事件で倒れてきた棚から守ってくれたのも、今までこんな私を愛してくれたのも、みんな先生。


「それなのにどうして私は先生を守れないのよ!」