私はとりあえずおしゃべりの輪から抜け、部屋を出て会場である式場をうろついた。


ヨーロッパの豪邸を思い起こさせる高そうなじゅうたん。


淡い輝きを放つきらびやかなシャンデリア。


それがまず目につく。


なんだか夢の中にいるような気がした。


しかし、そのわりには意識がはっきりしている。


これは夢じゃない。


現実だ。


改めて思い知らされる。


いいのかな。


本当にいいのかな。


平凡な私なんかが先生と結婚して。


そんな気持ちにすらなる。


あまりにも幸せだから何かがこの先にあるような気がしてしまう。


その時だった。


「キャー!」


「大変!」


階段の方が何やら騒がしい。


異変を感じ、私は急いで行ってみる。


途中で三七子ちゃんが真っ青な顔をして走ってきた。


「流星ちゃん!大変なの!」


それだけ言って私を階段の方に引っ張っていく。


「!」


階段を見下ろした私は気を失いそうになった。


階段があまりにも高くて怖くなったわけではない。


それだけだったらどんなにいいだろう。


なんと、階段の下で先生が仰向けに倒れていたのだ。


数分前までいつもと変わらない笑顔を振り舞いていた先生が。


「先生!」


私は慌てて階段を駆け下りた。