-8月1日-


吸い込まれそうなスカイブルーの空には、ソフトクリームのような雲が浮かんでいた。


今、目の前の鏡の中には1人の女性がいる。


彼女は今日で23歳。


まだあどけなさが残る彼女だが、純白のエレガントなデザインのウェディングドレスに身を包んだ姿はまるで別人のようだ。


おとぎ話にでも出てきそうな魔法の鏡を見ている気分になる。


頭の中で流れるのはワーグナーの「婚礼の合唱」。


この曲は日本ではめったに合唱で歌われないらしい。


確かに私の頭に流れるのも人の声ではなく、ピアノの音だ。


「おーい」


後ろから先生の声がした。


振り向くとそこに立っていたのは、白いタキシードを身にまとった先生だった。


なんという美しさだろう。


こんな人が私の結婚相手でいいのだろうか。


そう思わずにはいられない。


先生の美しさを表現することなんて出来なかった。


どんな言葉で表しても何かが足りない。


一瞬、時間が止まったような錯覚に陥った。


しかし、先生の一言が再び時を動かす。


「似合うよ。まるで白いバラのようだ」


顔が赤くなったのが自分でもわかった。


「せ、先生。白いバラのようだって」


案外キザなのね。


「なぁ、白いバラの花言葉を知ってるか?」


「いいえ」


「「私はあなたにふさわしい」、そして「相思相愛」という意味だ」