-翌日-


日曜日。


私は電車に揺られていた。


実家に向かうためだ。


なんとなく気まずくて、これから帰るだなんていう連絡は出来なかった。


いつも連絡してから家に行っていた私がいきなり行ったら、いったい母はどんな顔をするだろう。


昨日のこともあるし。


「はぁ…」


曇ったため息がこぼれる。


今日だけで何回目だろうか。


空も一面、重苦しいグレーに占領されていた。


思い出したくもない昨日が、コマ送りのように次々に頭の中に流れ込んでくる。


母が私達を見て驚く。


私が慌てて弁解をする。


母が取り乱す。


なだめようとした先生の手を母が叩く。


悲しげな顔で母が私達の間をすり抜け、駆けていく。


どのシーンも、まるでしつこくこびりつくシールのように頭から離れない。


いや、カーペットか何かに付いてしまったタバコの焦げ跡に例えた方がいいかもしれない。


叩いてもこすってもきれいには落ちない焦げ跡のように、頭に映像がしっかりと焼き付いてしまっているのだ。


悲しい気持ちで電車を降り、家に向かった。


チャイムを鳴らすと返事がある。


どうやら母は外出していないようだ。


そう考えていると、ガチャリという音がした。


「流星…」


母は気まずそうに言った。