思い悩む私の元に、先生からの電話が来たのは、それからさらに数時間経った頃だった。
「もしもし」
《もしもし。俺だ》
「先生ですか」
《ああ。さっきはごめん。急に帰ろうだなんて言って》
「いえ…」
《それで、睡蓮さんのことだが…》
「母、ですか」
なんとなく胸がちくちくする。
《睡蓮さん、だいぶ取り乱していたよな》
「はい。あんな母、見たことありませんでした」
《水橋、俺どうすればいいかな》
「え?」
《俺、ほんの数年間だったけどあの人の夫だったからな》
ああ。
忘れていた。
互いに想っていたのはわかっていたけど、それは元は夫婦だったから。
同じ屋根の下で、互いへの愛を抱えて生きていた時間があったから余計なんだ。
「先生。私達、別れた方がいいんでしょうか?この関係を終わりにした方がいいんでしょうか?」
《水橋…》
「そうですよ。別れて、先生はまた母のところに行ってあげて下さいよ。きっとそれが一番なんです」
そうすれば母は悲しまなくて済む。
《お前、それ本気で言ってるのか?》
「はい。本気です」
《…》
嘘だよ。
先生と別れたくなんかない。
本当はずっと一緒にいたい。
なのに、まるで何かに操られているみたいに口が勝手に動いてしまう。
「もしもし」
《もしもし。俺だ》
「先生ですか」
《ああ。さっきはごめん。急に帰ろうだなんて言って》
「いえ…」
《それで、睡蓮さんのことだが…》
「母、ですか」
なんとなく胸がちくちくする。
《睡蓮さん、だいぶ取り乱していたよな》
「はい。あんな母、見たことありませんでした」
《水橋、俺どうすればいいかな》
「え?」
《俺、ほんの数年間だったけどあの人の夫だったからな》
ああ。
忘れていた。
互いに想っていたのはわかっていたけど、それは元は夫婦だったから。
同じ屋根の下で、互いへの愛を抱えて生きていた時間があったから余計なんだ。
「先生。私達、別れた方がいいんでしょうか?この関係を終わりにした方がいいんでしょうか?」
《水橋…》
「そうですよ。別れて、先生はまた母のところに行ってあげて下さいよ。きっとそれが一番なんです」
そうすれば母は悲しまなくて済む。
《お前、それ本気で言ってるのか?》
「はい。本気です」
《…》
嘘だよ。
先生と別れたくなんかない。
本当はずっと一緒にいたい。
なのに、まるで何かに操られているみたいに口が勝手に動いてしまう。



