それから私達は月に1回のペースで会った。


ある時は川へ行き、ある時はあの夏休みのように遊園地へ行き、またある時は山へ行き、別の時には海に行った。


2人の時間を重ねるたび、先生といる時間のすべてがかけがえのないものになっていく。


「ちょっと水橋、それは買いすぎだろ」


「いいじゃないですか」


9月。


私達はいつものように会い、買い物をしていた。


先生が私の住んでいる町に来れば知人に目撃される可能性がかなり低くなるので、今回も先生が私のマンションの最寄りの駅に電車を乗り継いでやって来た。


私は「よいしょ」と言って紙袋4つを持ち直した。


先生は苦笑している。


「2つ持ってやるよ」


顔をしかめる私を見かねたらしく、私の返事も聞かないで先生は中身がぎっしり入った取っ手付きの紙袋を2つ持ってくれた。


「ありがとうございます」


「気にするなよ」


そう言ってニコッとする。


あぁ、やっぱり先生は紳士だなぁ。


高校の時に友達と「絶対に青山先生は紳士だ」と言っていたのを思い出す。


私は笑顔にしばらく見とれていたが、ふいにそれまで微笑んでいた先生の表情がサッと変わった。


いや、先生だけでなく私の表情までも変わってしまった。


目の前にいたのは…。


「睡蓮さん…」


「か、母さん!」