「先生、それは本気ですか?」

嘘。


嬉しいのに。


嬉しいのに聞いてしまう。


「ああ、本気だ」


「!」


「いつからだろうな。お前からのメールや電話が待ち遠しくて。それがいつしか楽しみになっていた」


「…」


まさか先生がこんなことを考えていたなんて思いもしなかった。


「それにな、俺が「睡蓮さん、睡蓮さん」って騒いでもお前は変わらず接してくれたよな。まっすぐな奴なんだって思った」


「いやあ」


こんなことを初めて言われたので、照れ臭くなってしまう。


「それでだな、お前といる時間が最も楽しくて大切なものだと気付いた時に1つの結論にたどり着いた」


「結論?」


「その結論が…水橋、お前が好きだということだ」


改めて言われて私の顔はたちまち紅潮する。


体温も一気に上がるのがわかった。


「何度も悩んだんだ」


彼の横顔はどこか苦しげでさえある。


「以前、俺はお前の精一杯の告白を拒んだ。そして睡蓮さんと結婚して別れて。結局2人とも傷つけてしまった」


「先生…」


「そんな俺がお前と結ばれることを願っていいのかずっと考えていた。だが、どうしても抑えられなかったんだ。たとえ虫が良いと分かっていても」


「それじゃあ…お付き合いして頂けるんですか?」


「ああ。お前がそんな俺を許してくれるなら」


「嬉しいです。本当に…」


大学4年生になる春。


あの冬休みの告白から4年以上が経っている。


高校2年生の秋からずっとずっと想い続けて今、やっと片思いに終わりを告げた。


感動のあまり私の目頭がじわっと熱くなる。


「おいおい、泣くなよ」


先生は苦笑する。


「だって」


「ったく、仕方ねぇな」


そう言って青いチェックのハンカチを渡してくれた。


私はこの時ほど幸せを感じたことはないと思うくらい今を幸せに思った。


何よりも嬉しい。


先生。


これからずっと私達は一緒にいて、まっすぐな人生を歩めるんだよね…?