興奮のあまりに震える指で、私はこう返す。


『それはどういうことですか?』


心のどこかでそっと期待する。


期待が増すあまりケータイが鳴った時、私は飛びつくようにそれを開いた。


『そのままの意味さ。別に深い意味なんてない』


実にクールだ。


先生らしい。


私が興奮しても、先生は先生らしさを失っていない。


まぁ、私が興奮しているだなんてケータイの向こうの先生にはわからないだろうが。


じゃあ…。


『期待していいんですよね?』


こう送ってみた。


先生の、驚きで瞳が大きくなる様が目に浮かぶ。


思わずクスッと笑ってしまった。


返信はすぐにやってきた。


『期待?まぁ、勝手にしろ』


勝手にしろ?


それならこうだ。


『じゃあ…期待しちゃいますからね!』


このメールで先生との心の距離が少しでも縮まればいいな、と私は淡い期待を抱いた。


その後もたわいのないやり取りを繰り返してクリスマスは優しく終わっていった。


そんな感じでもどかしいながらも穏やかな日々が急変したのは、それからまた3ヶ月ほど経った桜舞う季節。


『水橋、ちょっと話がある!』


冷静な先生にしては珍しく興奮したような声が、ケータイの向こうから聞こえてくる。


私は春用のベージュのトレンチコートを翻(ひるがえ)して駅に向かった。


「先生!」


「水橋…」


ちょっと寒いくらいなのに、白いベストと白をベースに紫とスカイブルーのストライプ模様のワイシャツという姿の先生の額には汗すら浮かんでいた。