「…そういえばさ」


先生が背中越しに話しかけてくる。


「何ですか?」


「お前の名前ってどういう由来なんだ?」


「いきなりどうしました?」


「いや、突如頭の中にペルセウス流星群っていう単語が出てきて」


「確かに時期的には今頃ですけど…そんな単語が出てくるなんて、ずいぶんロマンチックなんですね」


「悪いか?」


「別に。本題ですけど、流れ星みたいにキラリと光るものがある人になりますように、という願いを込めたらしいです。まぁ、結局はこんな平凡な娘ですが。先生は?」


「俺は…まわりに流されず、自分の意志を示せるようにっていう願いからきているんだそうだ」


「自分の意志を示す?それじゃ、皐っていう字は?」


「5月(皐月)に生まれたから。単純だろ?」


ふふ、と笑っている。


「もっとカッコいい由来かと思っていました。皐示ってカッコいいじゃないですか。…字が」


「なんだ、その最後の付け足しは」


「別に深い意味はありませんよ」


「それにしても流れ星みたいに、だなんてロマンチックだよな。さすが睡蓮さんだ」


「言っておきますけど、この名前を付けたのは私の父、水橋健一郎ですからね」


「そうか…」


「そうですよ。っていうか、もう寝ますね。おやすみなさい」


「ああ、おやすみ」


静寂が訪れる。


でも、胸の中では心臓がドキンドキンとうるさく音を立てて跳ねていた。


一方の先生は早くも寝てしまったのか、背後からすう、すうと息づかいが聞こえる。


振り向きたい。


寝顔を見たい。


触れたい。


そんな気持ちをぐっとこらえる。


今、私だけが先生とこの空間を共有しているんだ。


それは目の眩むようなまぶしい現実。


このまま永遠に2人で…。


それは今までに何回願っただろう。


今もまた、願っている。


ほしいのは先生との永遠。


そんな日は来るのかな。