-銀星高校-


「おっ、水橋か。久しぶりだな」


職員室を訪ねると、最初に顔を出したのは橋場先生だった。


心なしか少しだけ白髪が増えたように見えて、それでやっと年月の経過を思い知らされた。


「お久しぶりです」


私はペこりとお辞儀をした。


「大学はどうだ?」


「うーん、ぼちぼちですね」


「ぼちぼちって」


先生は笑った。


私もつられて笑う。


「まぁ、元気そうで何よりだよ」


「先生もお元気そうで良かったです」


「なんだか照れるな」


少し高い声で言って、彼はまた笑顔を見せた。


「あっ、そうだ。先生、青山先生はいらっしゃいますか?」


「ああ、いるけど。えーっと…ちょうど学習館での課外が終わった頃だからその辺りにいるかもしれないな」


橋場先生は右腕に携えたシルバーの時計を見ながら言った。


うっかり私もそれに視線を注ぐが、すぐにお礼を言う。


「ありがとうございます」


私は職員室を出て学習館に向かった。


角を曲がると、向こうから私より10センチほど背の高い誰かが歩いてくる。


それはまぎれもなく、青山先生だった。


会うのが怖くて、でもずっと会いたかった男性(ひと)。


「…!」


近づいた私は思わずその姿に息を飲み、見惚れてしまった。


久しぶりに見た先生は、窓から入り込む春の陽射しを浴びて美しく輝く前髪を揺らしながら優雅に歩いていたのだ。