「どうして…」


「…」


「どうして離婚なんか!」


思いもよらぬ事実に私は両手の拳で机をバンと叩き、勢いよく立ち上がった。


飲みかけの紅茶の紅が揺れる。


そこには私の顔が歪んで映し出されていた。


「性格の不一致よ」


「そんな…」


「仲がいいのなんて最初だけね。わたし、やっぱり性格がダメなのかしら。何事も続かないの。健一郎さんの時も、皐示さんの時も」


「…」


切なげで、でも悲しそうに微笑む母に対し、私は何も言えなかった。


「ごめんね、流星。今まで黙っていて」


「いつ別れたの?」


「1ヶ月前よ」


「どっちから別れを切り出したの?」


「わたしよ」


「そう…」


悲しい沈黙が部屋に広がった。


クラシカルなデザインの壁時計のカチ、コチという音がやけに響く。


その気まずさに耐えられなくなり、私は沈黙を破った。


「母さん」


「何?」


「私、帰るね」


「あなた、もしかして…」


「大丈夫。離婚したのに黙っていたことを怒っているわけじゃないよ。ただ、今はここにいる気分じゃないだけ。また来るからさ」


「流星…」


「心配しないで。ね?」


「わかった。気をつけてね」


「うん。またね」


母に見送られて家を出て、私が向かった場所、それは学校。


銀星高校だった。