「流星ー、早くおいでよ」


顔を上げると、友達の川西安美(かわにし あみ)が手を振りながら私を呼んでいた。


「早く来ないとお前の分のご飯食べちゃうぞ」


鹿沢ショウスケ(かざわ しょうすけ)もそう言っていたずらっ子のような笑みを見せる。


「あ、うん」


私は慌てて駆け寄る。


「流星、どうしたの?電話がかかってきてからぼーっとしているよ?」


野村陸(のむら りく)が私の顔を覗き込む。


彼女はお嬢様学校、桜華風(さかかぜ)女子高校に通っていただけあってバックや服などがすべてブランド品だった。


まったくうらやましい限りだ。


「なんでもないよ」


無理に笑って私達は札幌の街を歩いた。


私のような田舎者から見ればここは大都会だ。


どこを見てもビルがあり、コンビニの数もやたらに多い。


目的の札幌市時計台をデジタルカメラにおさめたところでホテルに行く。


「わー」


「ほえー」


「きゃー」


私、陸、安美の女子3人は声を上げた。


部屋はペパーミントグリーンの壁に茶色のお洒落なナイトテーブルとドレッサーとクローゼットがあった。


私はさっそくベッドにダイビングした。


「寝てる時が一番幸せだー」


私のセリフに陸は苦笑し、安美はうんうんとうなずく。


…今だけは。


せめて今だけは先生のことを忘れて楽しみたい。