~Side流星~


お茶の時間を終えた私は縁側でぼんやりと青空を見上げていた。


どんなに遠く離れていても皆とこの空で繋がっているんだよね。


健一郎父さんも、三七子ちゃんも、もちろん先生も。


そういえば、健一郎父さんと最後に連絡を取ったのは3年前で、会ったのは確か10年前だっけ。


ふと3ヶ月前に先生が言ったことを思い出す。


「どんなに忌み嫌っていても消せないんだな、親子の絆って」


そうだよね。


離れていても親子の絆は消えないんだよね。


久々に連絡でもしてみようかな。


そう思ってすっと立ち上がる。


それにしても、先生には親子について色々考えさせられたなぁ。


直後、孫の顔が見たいと言った母の言葉を思い出す。


私…良いお母さんになれるのかな。


この先、一体どうなるんだろう。


心の中で呟いてみても、空は相変わらず青いだけ。


でも、先生がいればきっと大丈夫だよね。


私達はいつでも繋がっているから。


この空で、そして運命の赤い糸で。


「ねえ母さん、健一郎父さんの連絡先ってあれから変わってるかな?」


「え?」


「久しぶりに会いたいんだ」


「!」


母は一瞬、驚いた顔をしたがすぐにふわりと微笑む。


「変わってないんじゃないかしら。連絡先はこの手帳に書いてあるから」


「ありがとう 」


「健一郎さん、会ってびっくりするかもね。あの泣き虫だった流星が、今じゃ結婚してこんなに大きくなったんだもの」


「なんか照れるなあ」


「離婚してしまったとしても、あの人を心から愛していたからあなたがいる。そして、あなたにとっては大切な父親なのよね」


空を見上げるような母の目は少し揺れていたような気がした。


「母さん…」


「いつか病院の屋上でも言ったけど、あなたは本当に大きく立派になったわね、流星」


「父さんにもそう言ってもらえるといいな」


遠くに流れていく入道雲を見送りながら私はケータイを取り出す。


「もしもし。父さん?…」


その声は、心なしか弾んでいるように思えた。


-完-


(2019年 12月21日 22:22)