そんな私の思いなどつゆ知らず、いきなり母は咳払いをして改まったように言う。


「とりあえず若いと言われるうちに」


「ん?」


「孫の顔が見たいわね」


「!」


私は突然のとんでもない発言に、まるで餌を欲する魚のごとく口をぱくぱくさせていた。


「何びっくりしてるの。わたしが今の流星の年齢の時、あなたは幼稚園に通っていたじゃない」


「いや、そんなこと言われてもなぁ」


無意識に頭をかきながら言ってしまう。


恥ずかしい話だけど、先生と2人でいる時間が幸せすぎてあまり考えていなかった。


先生と私の子供、かあ…。


その言葉になんだかとても神秘的な響きを感じた。


「何を照れてるのよ。でも、皐示さんのこと、ちゃんと愛してるのよね?それならまぁ、いいんだけど」


その台詞に思わず勝ち誇ったような笑みが浮かぶ。


「当たり前だよ。後にも先にも先生以上に好きになれる人なんかいない」


それを聞いて母の表情が綻んだ。