8月。


私は25歳になっていた。


今はお盆に1人で実家に戻って、久々に母と親子水入らずの時間を過ごしている。


先生は夏休みの課外授業に駆り出されて来れないのだ。


「高校3年の春に流星がこの家を出て以来ね。あなたがこの家で過ごすのは」


母はニコニコしている。


「その後でも1人で来たことあったじゃん。大学3年生の時とか、魔王の時とかさ」


「でも、こんなに長くはいなかったでしょう」


「あ、確かに」


何を隠そう、私がこの家に来て既に2日経っているのだ。


そしてあと1日ほど滞在するつもりでいる。


バイトは店長からお休みもらったしね。


「ねえ流星、そういえば皐示さんは元気?」


「うん。元気、元気。とてもアラゴーとは思えないよ。身体的にも精神的にも」


私はわはは、と笑う。


「わたしも46歳だからどちらかといえばアラフォーよりアラゴーになるわね」


母が思いついたように言った。


「そうか。いやあ、若い、若い。ははは」


「何、その適当な反応」


「ええ?別に適当じゃないよ」


他愛もない話で母と笑い合うのもかなり久々な気がする。


やっぱり、たまには里帰りもするものだな。


私は冷たいお茶を飲みながらそんなことをしみじみと感じていた。