~Side流星~


「え?」


思わぬ言葉だったのか先生の体がビクッと反応した。


「そんなことって言ったら、ずーっと辛酸を嘗めて生きてきた先生に申し訳ないと思う。でも、あなたは犯罪者の弟だからこれ以上付き合うのはもう嫌だ。さようならって私が言うと思ってた?」


「それは」


上手く言葉に出来ないのか、もどかしそうだ。


「もしちょっとでも先生がそう思ってるんだとしたら、もう一度言うね」


私はすう、と息を吸う。


「先生がいて命が限りあるのと、先生がいなくて限りない命を授かるのとどちらか一方をを選択するなら、迷わず前者を選ぶんだから」


「お前…」


8月の事件の後に私が言ったことを先生は覚えていたようだ。


そして、私も。


「先生はただ黙って私の隣にいてくれればいい。何も考えなくていいから」


少しぶっきらぼうになってしまう。


けど、これが本音だった。


先生と未来が築けるだけでいい。


犯罪者の弟という肩書きがあってもいい。


それを私やまわりの人が少しずつでも理解し、受け入れていくことが出来れば、先生はきっと…。


「流星」


「いや、ほら、それにさ、私は高校時代からずっと先生にベタ惚れだったわけだし?離れたくても離れられないっていうか惚れた女の弱みっていうか、ねえ?」


自分が言ったことに対して恥ずかしくなってごまかしたはずが、さらにとんでもないことを言ってしまう私。


しかし、先生は蕾がほころぶようにふわりと微笑んだ。


「ありがとな。本当に、ありがとう」


私もフッと微笑みを返した。


綺麗事だと笑うなら笑っても構わない。


私は先生を信じてる。


だって先生は、先生でしょ?