夢でいいから~25歳差の物語

「皐示」


どのくらい経ったのかわからない。


最初に沈黙を破ったのは章嘉さんだった。


「悪かった。俺達の都合だけでお前を紅葉達に押し付けて」


その言葉に先生ははっとした顔になる。


「…!」


しかし、彼は何も言わなかった。


章嘉さんはぽつりぽつりと話し始める。


「お前の兄、謙逸が事件を起こしたのは知ってるな?」


先生は無言で頷く。


「それから青山家は近所の笑い者になった。謙逸だけじゃない。俺も、楓も、お前もだ。外に出れば近所の人達の冷笑、軽蔑、嘲罵。そして心ない嫌がらせ電話、小石の投げ込み。朝も、昼も、夜も…」


先生の眉間のしわが深くなる。


その下にある目は少し潤んでいるようだ。


わかってもらえない悔しさ。


近所の人達の裏切り。


殺人犯の身内に対する偏見。


それらを思い出して怒りを感じているのだろう。


私は急に恥ずかしくなった。


今でこそ当たり前になっているが高校生の時、先生との年齢差を気にして自分達は好奇の目にさらされるだろうと考えたことがあった。


だけど、この青山家の人々が受けてきた視線はそんな生易しいものじゃなかったはずだ。


きっともっと鋭くて痛くて冷たい視線だったんだ。


当時は知らなかったとはいえ、なんでそんなことを考えてしまったんだろう。